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ナヴァーリヌィが訴追される


反体制派のブロガーとして知られ、反プーチン・デモのリーダーでもあったアレクセイ・ナヴァーリヌィが刑事訴追された。容疑は材木を盗んだ、というものである。このニュースが伝えられると、西側のジャーナリストの間では、プーチンによる反体制派の弾圧が本格化するのではないかとの観測が広がったようだ。

実はナヴァーリヌィは、同じ容疑で訴追され、無罪判決を受けていた。だから、今回の訴追はその蒸し返しでもあり、いくらなんでも、一事不再理を旨とする近代刑事訴訟法からの、大きな逸脱ではないかとの批判が渦巻いている。

その容疑とは、2009年にナヴァーリヌィがキーロフの企業(KirovLesという林業会社)に対して行った行為を指すのだという。ナヴァーリヌィはこの企業に対してある契約を結ぶようにアドバイスしたが、その結果この企業に損害を負わせたというものだった。しかし捜査の結果、不正の事実は認められず、
ナヴァーリヌィはいったん解放された。その際には、刑事被告人として受けた損失に対しての補償金の支払いまで約束されたという。

ところが、この結果に対して、捜査当局のトップであるアリェクサンドル・バストルイキンが激怒し、捜査のやり直しと、立件を厳命したというのだ。それは5月のことで、ちょうど反プーチン・デモの最盛期にあたっていたわけだ。

実務担当者は、いくら上司の厳命とはいえ、法律を無視するわけにもいかないと考えたのだろう、同じ事件を別の角度から仕立て直し、ナヴァーリヌィが悪党仲間と組んで、13000立法ヤードの材木を盗んだということにした。

これに対してナヴァーリヌィは事実無根だと反論しているが、捜査当局側はナヴァーリヌィを絶対有罪にしてやると意気込んでいるそうだ。捜査当局がそういうのなら、実際にそうなるだろうと、誰もが考えているというから不思議だ。

たぶん、それはプーチンの姿勢に変化が表れていることを反映しているのだろう。プーチンは最近まで、反体制派を露骨に弾圧することを控えてきた。欧米から野蛮だと非難されるのを嫌ったからだと言われている。しかしもう、そんなことを言ってる場合ではない、と考え始めたのではないか、そんな風に思われるのである。

ナヴァーリヌィの有罪が確定すれば、彼にはおよそ7年間の豚箱入りが待っている。石油を盗んだといって訴追されたホドルコフスキーを襲ったのと同じ運命だ。(写真はロイターから)

(参考)Russia Charges Anticorruption Activist With Embezzlement in Plan to Steal Timber By Ellen Barry NYT





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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