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ロシア人のためのロシア:極右政党進出の動き

ロシアの政党法が改正されて、この夏から許可要件が大幅に緩和されることに伴い、新しい政党が続々と生まれそうだ。この改正はロシアの民主化の象徴として位置付けられているが、皮肉なことにその結果生まれる政党の多くは極右政党になるだろうと、プラウダ英語版が予測している。

プラウダによれば、すでに70の政党が許可を求めて、司法省に事前登録しているそうだ。そのうち6つは、名称にロシアあるいは民族と云う言葉を使っている。ロシア民族正義復活党、ロシア友愛クラブ、ロシア民族保守党、我等ロシア、ロシア民族民主党、ずばりロシア、といった具合だ。このほか三つの政党が母国という言葉を使っている。

「ずばりロシア」の党首ドミトリー・デムシュキン氏は、「我々はまず2万人の党員から出発し、ロシアのメジャーな政党、つまり権力を狙える政党になることを目的としている。我々の政策は、ロシア人のためのロシアをつくることだ」といっている。

デムシュキン氏と同じような考えは、他の極右政党も共有している。そこでこれらの政党が力をもつようになれば、どんな事態が予想されるか、政治学者の中には憂慮する者もいる。

というのも、いうまでもなくロシアは多民族からなる国家だからだ。そういう政治的な状況の中でことさらにロシア人の利害を強調することは、国家にとって不可欠な、統合への意思と衝突することになる。

政治学者のレオニード・ポリャコーフ氏はいう。国民政党と云うものは、それがたとえ右翼政党であっても、国民各層に広く目を配らなければならない。特定の国民層の利害に特化した政党は、政党としては大きくなれない。そこをわかっていて、国民の統合に反するようなプロパガンダを掲げることは、ロシアの健全な政治にとっては有害なことだ。

しかしそれだからといって、政党要件に極右政党を排除するような規定を入れるわけにもいかない。極右政党の進出も、民主主義のコストの一部だと割り切らねばならぬ、というわけである。





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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