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ロシアはどこに行くのか Half Way to Where?


ソヴィエトが崩壊して一時は西欧並みの民主主義と自由市場経済の定着が期待されたロシアだが、結局ロシアはロシアでしかないし、これからもロシアでしかありえないだろう、近頃は、そんな風に思わせられることばかりが続く。

ではそのロシアのロシアらしさとは何なのか。ソ連・ロシア史研究で知られるロバート・コンクェスト氏が Newsweek 最新号に所論を寄稿している。Half Way to Where?  In the aftermath of Russia's elections, there are hints that things may finally be changing. the question is what the final outcome will be.

ロシア人の基本となる民族性というものがある。それはチェーホフが慨歎した未開性であり、レーニンのロシア革命によっても変わらなかった、というかもっと増幅された形で現れた野蛮性であり、プーチンの今日において、最もグロテスクな形でロシアを民主主義的な世界から隔てている異常性である、とコンクェスト氏は言う。

この異常性とは、人が人を大事にせず、自分の事だけを大事にし、その自分にとって不都合な人間は抹殺しても構わない、そんな風に考える人間が多数を占めているような社会の異常なあり方をさす。ロシアは1000年も前から、こうした異常性を異常でないと受け取るような、どうしようもなく異常な社会でありつづけてきた、コンクェスト氏はそうもいう。

この異常性は、ロシア人という民族のあらゆる生活層において現れる。コンクェスト氏はチュルノーブィリ事故に際しての、現場責任者と国家の最高責任者の反応について触れながら、ロシア人が救いようもなく駄目な民族なのだということを証明しようともしている。

チェルノーブィリ原発に異常事態が発生した時、その報告を受けた原発所長は、異常を知らせる計器が異常の原因となっているのなら、そんな計器はぶっ壊してしまえといった。また副首相だったシチェルビーナは、近隣住民を避難させるべきかどうか指示を仰がれた時に、それを棄却した。放射能より国民のパニックの方が有害だという理由からだ。

ここに垣間見ることのできることは、ロシア人が人間を大事にしないという厳然たる事実だ。彼らは人間の命の尊さより、自分の生きている現実の快適さを優先する。つまり公というものへの敬意の念が徹底的に欠けているのだ。

こうした自己を中心とした世界に沈殿する生き方はロシア人にとって、徹底的に伝統的な、根本的に身に染みた生き方なのだ。ロシア人はその生き方を、タタール人に支配されていた時代に骨の髄まで身に着けたのだ。その時に身に着けた救いがたい奴隷根性が、今になってもロシア人を呪縛し続けている。そうコンクェスト氏は言いたいようなのだ。(写真はEPAから)





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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