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クドリン(Алексей Леонидович Кудрин)ロシア財務相辞任劇の波紋


ロシア副首相兼財務相アレクセイ・クドリン(Алексей Леонидович Кудрин)の辞任劇をめぐって小さな波紋が起きている。

ことの発端は、先週末、プーチンが大統領に復帰し、メドヴェージェフは首相としてプーチンを支えるというアナウンスがなされた直後に、クドリンがメドジェージェフの主導する政府には閣僚として加わらないと宣言したことにある。

これに対してメドヴェージェフは週明けの月曜日(26日)に、間髪をおかずといった具合に、クドリンを辞任に追いやったのである。

この日ウリャーノフスクで開かれた開発関係閣僚会議の冒頭、メドヴェージェフはクドリンの発言を厳しく非難し、その場で辞表を書くよう強要した。クドリンはプーチンに相談させてくれといったらしいが、メドヴェージェフはそれを許さず、恫喝するような形で、クドリンに辞表を書かせたという。

クドリンはかねてから、財政政策をめぐってメドヴェージェフと対立していた。積極財政を主張するメドヴェージェフに対して、クドリンは堅実な財政運営を主張し、とりわけ軍備の拡大を主張するメドヴェージェフをけん制してきた。そんな両者がこれまで表立って衝突しなかったのは、間にプーチンがいたからにほかならない。

そのプーチンが大統領になり、メドヴェージェフが直接のボスとなっては、対立が激化するのは避けられない、そう判断したのだろう。

クドリンは財務相として10年以上の実績があり、その堅実な財政運営は国の内外から高く評価されてきた、そんな自負がこうした行動をとらせた背景になっているのかもしれない。

この出来事をめぐって、世界中のメディアの間で様々な憶測が飛んだ。

ひとつはメドヴェージェフの高圧的なやり方を槍玉に挙げるものだ。メドヴェージェフは西洋流の価値観をロシアに根づかせることを期待されて登場したのに、最近は師匠のプーチンと全く変わらない反動的な姿勢をとるようになった。高圧的になったのも、プーチンをまねている証拠だ。そういうわけである。

また、プーチンとメドヴェージェフの関係が、磐石でないことが暴露したと見るものもいる。クドリンはプーチンの信頼が厚く、未来の有力な首相候補の一人とも見られていたが、その男をプーチンの意向を踏まえない形でメドヴェージェフが切り捨てた。それが今後、プーチンとメドヴェージェフの間に溝を作るきっかけになる可能性がないとはいえない、そんな見方だ。(写真はクドリン:WPから)





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