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プーチンがロシア大統領に復活


プーチンがロシアの大統領に復活することになった。与党統一ロシア(Единая Россия)の大会席上、来年行われる大統領選挙に立候補することを明らかにしたのだ。プーチンには事実上対抗馬は存在しえないから、彼の意思がそのまま通ることになる。なお、メドヴェージェフはプーチンの下で首相を勤めることに意欲を見せているらしい。

こうなるだろうことは、大統領職をメドヴェージェフに譲った時から明らかだったといってよい。大統領職は連続して二期八年を限度とするロシア憲法を尊重する限り、プーチンはいったん大統領職をおりなければならなかった。その不在の期間に、自分の忠実な召使いであるメドヴェージェフに、留守番を勤めさせただけの話だ。憲法上の制約がなくなれば早速復帰するつもりであったことは間違いない。

それにしても、メドヴェージェフは、いくらプーチンの召使いだったとはいえ、ずいぶん簡単にゲームを降りる気になったものだ。やり方次第では、プーチンの影響力を弱め、盤石な権力基盤を築く手もあったはずだ。それができなかったのは、プーチンがあまりにも巨大な影響力を保持していたからだろう。何しろプーチンは、私設の応援団を組織するなど、巨大な政治的・物理的勢力を誇ってきたのだ。

メドヴェージェフは欧米には受けが良かったようだが、日本にとってはタフな相手だったといえる。彼の政権下で北方領土問題は見通しがつかないほどこじれてしまった。

それに比べれば、プーチンは日本の主張に耳を傾ける度量を持っている、と外務省の一部の役人たちはいっているようだ。歯舞・色丹の返還を約束した日ソ共同宣言の有効性を認めたり、領土交渉の継続に理解を示したからというのがその理由だが、そんなに単純なものではなかろう。

プーチンは首相時代でも、メドヴェージェフに影響力を振るっていたし、メドヴェージェフの対日戦略にも当然かかわっていたはずだ。だからプーチンに替ったからと云って、日ロ関係が一気に好転する保証はないと考えたほうが良い。

プーチンが日ロ関係に積極的になるのは、日本の経済力をロシアの発展に利用できると考える場合だけだ。プーチンが権力を握った頃のロシアは、経済の弱体化に悩まされていた。そんなロシアにとって、日本の経済力は魅力的に映ったのだ。だがいまは、ロシアの経済は一定の安定を示している。日本の経済力に頼る必要性はあまりない。それ故、プーチンが北方諸島を放棄してまで、日本との関係を強化する必然性は薄いといえる。

余り根拠のない期待に、振り回されないことだ。(写真は統一ロシアの大会に仲良く臨むプーチンとメドヴェージェフ:ロイターから)





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