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アレクセイ・ナヴァーリヌィ(А. Навальный):ロシアのホィッスル・ブロアー


「ロシアでは至る所に腐敗があると人々はいう、だがそういいながら腐敗した連中を野放しにしておくのは、わけがわからぬことだ」こういいきるのは、ブログを通じて権力者たちの腐敗を暴き続けている34歳の法律家アレクセイ・ナヴァーリヌィ(А. Навальный)だ。(上の写真:AFP提供)

彼はトランスネフチやロースネフチといった巨大国策企業の幹部による巨額横領事件をブログ上で暴いたのをはじめ、大企業の幹部や政治家たちの腐敗振りを次々と暴いてきた。その結果失脚に追い込まれた人物も多数に上る。

彼のやり方は、公表された資料を基に、その中に潜んでいる腐敗のサインを読み取って公表するというものだ。トランスネフチの事件は会計検査院の資料からあぶりだした、弁護士および会計士としての能力をフルに発揮してのことだった。

最初はまったく個人的な、ほとんど目立たない活動に過ぎなかったが、次第に人々に知られるようになり、今では彼のブログは膨大なアクセスを誇るようになった。

この成功に気をよくして、彼は活動を拡大するために、ロスピル(РосПил)というサイトを新たに開設し、ボランティアによる幅広い活動を呼びかけた。今では腐敗追求のための大きなネットワークになりつつある。

こうした彼の活動は、多くの人に支持されるようになり、コメルサント紙の世論調査によれば、モスクワ市長選挙が行われたとしたら、彼に投票すると答えたものが45パーセントにも上った。一方現職のモスクワ市長ソビャーニンはたった2.8パーセントだった。

面白いことに彼がこうした取り組みを始めたきっかけはごく個人的な怒りだったらしい。なけなしの金をはたいて株を勝ったにもかかわらず、いっこうに配当金がないので不思議に思っていると、配当金になるべき剰余金が、不正に横流しされていることを知ったのだ。そこで彼は、こうした泥棒たちを懲らしめてやろうと、立ち上がったわけなのだ。

いまや彼の活動は、個人的な怒りではなく、公の怒りつまり公憤に支えられている。だがロシアでは公憤を公然と吹き鳴らすホィッスル・ブロアー(Whistle Blower)は、殺されたり消されたりするのが大方の運命だ。実際ロシアではここ数年の間だけでも、多くのジャーナリストが殺されてきた。アンナ・ポリトコフスカヤの事件はその象徴的なものだ。

それでもナヴァーリヌィはひるまない。「自分は殺されるかもしれないが、そんなことをいちいち恐れてはいない、命のある限りロシアの不正と戦い続ける」こういってナヴァーリヌィは、英紙ガーディアンの記者に向かって胸を張ったそうだ。





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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