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ロシア大統領府長官ナルイシキン(Сергей Евгеньевич Нарышкин)の来日


ロシア大統領府長官ナルイシキン(Сергей Евгеньевич Нарышкин)が最近来日したが、日本のメディアは黙殺に近い扱いをした。日本政府の待遇はそれ以上にひどかったと、ロシア側には写ったらしい。ロシア政府高官に対するこうした日本側の冷遇振りを、プラウダなどは「面子をつぶされた」といって、批判している。

ナルイシキンが来日した主な目的は、東日本大震災で蒙った日本の窮状に対して、エネルギー供給などを通じて援助の手を差し伸べることだったと、プラウダの記事は書いている。あわせて鳩山元首相に対して、日ロ友好に貢献したとの理由で表彰することも含まれていた。

鳩山元首相の祖父鳩山一郎氏は日ソ平和条約への筋道をつけた人として、いまだにロシア人の間で評判が高い。鳩山一郎氏は、歯舞、色丹二島返還を日ソ平和条約の条件として設定した男だ。ところがその後、鳩山に続いた歴代自民党政権が四島プラスという新しい条件を持ち出して、すっかり話をややこしくしてしまった。ついては今の時点で改めて日ロ関係を再構築するための出発点として、鳩山時代のスタートラインに戻ろうではないか。鳩山一郎氏の孫鳩山由紀夫元首相の表彰には、どうもそんな思惑が隠されているようだ。

ナルイシキンは日ロ関係を見直すために必要な歴史認識の共有を進めるために、領土問題に関する日ロ間の共同研究の立ち上げにも言及した。そこでの相互研究のプロセスを経て、国後、択捉に対するロシアの主権の正当性を確立したいという思惑がその背景にある。

日ロ間にはいかなる形の領土問題も存在しないというのが、ロシア側の最近の姿勢だ。ナルイシキンはこうした主張の急先鋒ともいえる人物で、先日前原元外務大臣が訪ロした際にも、領土問題の棚上げを強く主張していた。それが何故、今のタイミングでこのような態度をとるようになったのか。

ロシア側は、極東の開発に日本資本が参加することを強く願っている。先日は韓国や中国に北方領土開発への参加を呼びかけたが、なかなかうまく進まないのを見て、やはり本命は日本だとの見方を強めているらしい。

今は、震災で困っている日本に対して、様々な援助を通じて友好的な雰囲気を作り出し、硬直した日ロ関係を立て直したい、そうした意向がよみとれる。

ところが、そんなロシア側の意向に対して、日本側はつれない態度を取り続けている。それが彼らにはいかにも心外なのだろう。日本はロシアの好意をまともに受け入れないばかりか、ロシアの顔をつぶすようなことばかりしている、というわけである。(写真はAFPから)





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