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ワールドカップ・ロシア大会の意味


サッカー・ワールドカップの開催国がロシア(2018)とカタール(2022)に決まった。アメリカ、イギリス、日本といった先進国を押しのけての決定の裏には、腐敗の匂いがしないわけではないらしい。アメリカのオバマ大統領は、FIFAの理事会に異例の非難を浴びせかけたが、それは今回のFIFAの票決がフェアプレイの精神に反しているという理由からだったらしい。

だがFIFAのセップ・ブラッター Sepp Blatter 会長にとっては、フェア・プレイよりもマネー・プレイのほうが重要だったようだ。

今回の票決をめぐっては、FIFAの理事二人が汚職を追及されたが、それは氷山の一角で、他の理事も多かれ少なかれ賄賂を受け取っていたというのが、事情通の見方だ。だがそれのどこが悪い、きれいごとばかりでビジネスは成り立たない、ワールドカップだってビジネスなんだ、というのが、ブラッターの本音のようだ。彼は理事たちの腐敗追及に首を突っ込みたがるイギリスのメディアに露骨な不快感を表明した。

だが、ロシアやカタールが的を得ることが出来たのには、別の事情も絡んでいる。それは、サッカーを始めとしたスポーツのマーケットが、グローバル化していることである。

とりわけ、西欧諸国の信用危機をきっかけにして、世界経済に占めるG7諸国の比重が低下し、BRIC's(ブラジル、ロシア、インド、中国)と称される新興国のウェートがぐっと高まった。今後20年間の経済成長率はBRIC'sが62パーセントに対して、G7は13パーセントという予測もある。

つまり、これからのスポーツ市場はBRIC'sなしでは考えられないということなのだ。今回のFIFAの票決は、こうした流れを象徴する動きと解釈することも出来る。

問題なのは、新興諸国が欧米先進国の価値観とは異なった価値観を持つ場合もあるということだろう。その最も象徴的なケースが、マネーの取りあつかいだ。

欧米の価値観では、物事の決定を金で左右しようとする動きはことごとくアンフェアとして退けられるのに、BRIC's諸国では必ずしもそうではない。スポーツに係らず、あらゆる取引をめぐって、人間関係とともに金が物を言うケースはいたるところにある。

イギリスのアンドリュー王子は、こうした流れに理解がある欧米諸国では珍しいタイプの人物らしい。彼はサウディ・アラビアに航空産業を売り込むにあたって、取引に金が流れていることを疑うイギリスのメディアを強くけん制して見せた。こうした取引には、金がつきものなのだということを、アンドリュー王子は深く理解しているのだともいえよう。

(参考) The Meaning of Russia 2018 What the World Cup says about the world. By Peter Tasker / Newsweek





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