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ロシアの対独戦勝70周年記念行事にポーランドが反発


今年(2015年)は、ソヴィエト・ロシアの対独戦争勝利70周年にあたるというので、プーチンのロシアは、5月9日に、モスクワで大規模な記念行事を予定しており、それにポーランドを始め、かつてのソ連の同盟国に参加を呼び掛けた。ところが、この招待にポーランドが反発、参加しないのは勿論、これに対抗するような記念行事を、西欧諸国と共に行いたいと、外交的な努力をしているところだという。

ロシアは、ソ連こそがナチスドイツから東欧諸国とりわけポーランドを開放したのだから、ポーランドがロシアと共に、この行事を祝うのは自然なことではないかと呼びかけているが、呼びかけられたポーランドの方はとんでもないと言って、ロシアの歴史認識を問題にしている。ソ連・ロシアは、ポーランドの解放者どころか、抑圧者だったというのだ。

第二次世界大戦の発端となったのは、スターリンのソ連とヒトラーのナチスドイツが手を結んでポーランドを分割したことだ。大戦が勃発した1939年から2年間の間に、ソ連は50万人ものポーランド市民をロシアに拉致し去った。1940年には、22000人のポーランド人がカトィンの森で虐殺される事件が起こったが、それはポーランドの知的エリート層を撲滅することで、ポーランドのロシアへの従属を狙ったものだった。また、大戦終了直前に起ったワルシャワ蜂起については、ソ連はこれを煽動しておきながら見殺しにした。そのため、15万人のポーランド人がナチスドイツに殺害された。

もっとひどいことをソ連はポーランドに行っている。ポーランドの領土の略奪だ。スターリンは、チャーチルらの黙認をいいことに、戦前のポーランドの東半分を、ドイツの東プロイセンと交換する形で取り上げた。その結果ポーランドは、父祖の代からの領土を失う一方、ドイツから領土をもぎ取ったという形になった。これは長期的に見て、ポーランドにとっては難しい問題のタネとなる。

ソ連に領土を侵略された点では、日本もポーランドと同じ立場にある。だから、この問題については、日本はポーランドと共同できる可能性がある。日本は、外交的にもロシアに押されっぱなしだから、ポーランドとの共同は、強いはずみとなるだろう。日本はそろそろ、そういう面で狡猾になる必要がある。

安倍政権は、イスラエルと仲良くしてアラブ世界と対立を厭わないような動きを見せているが、それは間違っている。日本は、アラブ世界とも、ましてやイスラエルとも、歴史上何らの因縁も持たなかった。だからいま、その一方に肩入れするなどとは、外交上何の意味もないばかりか、かえってマイナスである。日本が仲良くすべきは、国益に共通するところがあって、外交上のプラスを期待できる国であるべきだ。

(参考)Battling over history Economist





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