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メドヴェージェフに未来はないか?


ワシントン・ポストによれば、今ロシアではメドヴェージェフを標的にした侮辱や排撃のキャンペーンが流行っているそうだ。そしてそうしたキャンペーンを、プーチンは黙認しているという。そればかりか、プーチン自身メドヴェージェフを露骨に避けているともいう。これは、メドヴェージェフ失脚の予兆ではないか、というのである。この二人はつい最近まで大統領と首相を二人三脚のように努めており、いまはその役割を取り換えた状態で、双頭体制を継続しているわけだが、そこにひびが入りつつあるということらしい。

メドヴェージェフが攻撃される理由は、彼の価値観が西欧諸国の民主主義的価値観に近いということらしい。そうした価値観に基づいて、メドヴェージェフはリビアへのNATOの攻撃にゴーサインを出した。またメドヴェージェフは国内でも民主化を進めるあまり、反体制派を勢いづかせ、反プーチンデモを盛んにさせる原因をも作った。メドヴェージェフはロシア的価値観への敵対者であり、ロシアのナショナリズムにとって有害な人間である、という攻撃がなされている。

ワシントン・ポストによれば、プーチンとメドヴェージェフの不仲は前から始まっていた。決定的だったのは、メドヴェージェフが大統領再選に意欲を見せたことだった。二人の間では、メドヴェージェフの任期は4年間だけで、その後はプーチンに職をゆずるという約束ができていた。その約束をメドヴェージェフが破ろうとしたので、プーチンはメドヴェージェフに強い不信を抱いたというのだ。

しかし、結局メドヴェージェフは約束に従って大統領職をプーチンに返した。その際メドヴェージェフは首相として残ることを希望し、プーチンもそれを聞き入れた。でなければメドヴェージェフとの間で全面戦争になり、自分の方が破れるかもしれない。何故なら大統領には巨大な権力があるからだ。

しかし自ら大統領に返り咲いたプーチンには、いまやメドヴェージェフを畏れる理由はない。いつでも首相の職を剥奪することもできる。しかしプーチンがそうしないことには、いくつかの理由があるのだろう。たとえば、政策の失敗で国民の怒りを買ったときに、メドヴェージェフをスケープゴートとして使うなどだ。

こんなわけで、メドヴェージェフは急速に政治的な求心力を失い、いまや内閣の指導もまともにできていないという。メドヴェージェフは、なんとかプーチンの歓心を買おうとしていろいろなことをしているが、その姿勢がかえって嘲笑を呼び寄せ、自分の立場をますますむつかしいものにしている。

メドヴェージェフにはもはや明るい未来は残されていない、とワシントン・ポストの見立てはかなり厳しい。(写真はAFPから)

(参考)In Russia, Dmitry Medvedev is targeted by campaign of insults WP





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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