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誘拐された反体制活動家:レオニード・ラズヴォジャーエフ


ロシアの反体制活動家レオニード・ラズヴォジャーエフ氏は、政府転覆罪の容疑で最近拘留されたところだが、実は、ロシアの秘密警察によって誘拐されたうえで、子供を殺すと脅迫され、政府の転覆を目的とした暴動を企んでいたとの供述書へのサインを、強制されたと主張しているそうだ。氏に接触した人権擁護活動家が、氏から聞いた話だとして、伝えている。

氏は、日頃の自分の活動に対するプーチン政府の攻撃が迫っていることを察知して、ウクライナのキエフにあるユダヤ人移民擁護教会に駆け込み、アジールへの逃走を相談していた。その途中、小用のために席を外したところを、数人の男に襲われて、無理やりヴァンの中に放り込まれ、そのまま何時間もかけてモスクワまで運ばれた。モスクワで二日間、飲まず食わずの状態で過ごした後で、秘密機関による尋問が始まった。尋問官が氏に求めたのは、彼等があらかじめ用意していた調書にサインすることだった。その調書なるものには、セルゲイ・ウダルツォフやコンスタンチン・レーベジェフといった反体制活動家たちとともに、グルジア人の将校も巻き込んで、プーチン政権を転覆させるための大規模な暴動を仕組んでいたというものだった。

氏は当初サインを拒んでいたが、拷問されたうえに、人格を破壊させるような作用がある血清を注射するとまで脅かされたばかりか、二人の子どもたちを殺すとまでいわれた。それでついに心が折れて、調書へサインすることとしたというのでる。

氏は、いまやモスクワの刑務所に拘留されて、公判を待っている状態だが、幸運にも外部の活動家と接触する機会を得て、自分が当局によるでっち上げの被害を蒙っているのだと伝えることができたわけである。

司法当局は、今の所強気である。ロシアでは犯罪の立件に、容疑者の自白が大きくものを言うようで、今回もラズヴォジャーエフ氏が暴動にかかわったと自ら供述していることから、氏の有罪は間違いないといっているそうなのである。

氏のいうところが真実だとしたら、これは冤罪などという生易しいものではない。権力によるフレームアップそのものだ。

こうした動きの背景には、このところ強まってきた反体制勢力を、力をつけないうちに骨抜きにしたいという、政権側の思惑が見え隠れする。

プッシー・ライオットの女性メンバーたちは、教会の中でプーチンを罵ったことを咎められて2年間も豚箱に入れられるはめになったところだが、ラズヴォジャーエフ氏の場合には当然、その程度では済まない。(写真はAPから)





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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