ロシア情勢を読む
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よそよそしい会談:プーチンとオバマ


G20の場を利用して、プーチンとオバマが会談した。プーチンにとっては、アメリカ大統領と会談するのは、大統領職に復活して以来初めてのことだ。先日は、G8の席に自ら出席せず、メドヴェージェフを代理に立てたプーチンだが、G20の場は、欧米以外の広範な勢力をも代表しているとあって、自ら出席した形だ。そんなプーチンとの会談を、オバマは首を長くして待っていたフシがある。

しかし、両者の関係はぎくしゃくしたものに終わった。二者会談の後に記者会見の席に臨んだ二人は、こうした場での定例的なパフォーマンスとされている友好儀礼を取らず、互いによそよそしさを装った。

いまの米ロ関係にとって、最重要課題は中東情勢、特にシリアとイランの情勢だ。この二つの国と一定の友好関係にあるロシアを説得して、シリアのアサド大統領には退陣を、イランのネフジャドネサルには核開発の放棄を迫りたい、それがオバマの当面の目的だが、プーチンはつれない返事しかしなかった。とくにシリアについては、内政不干渉の原則を振りかざし、アサド政権に圧力をかけることには全く否定的な姿勢を示した。

プーチンが、米ロ関係の重要性をわかっていながら、こんな姿勢に終始した訳は、日頃からのアメリカへの怒りが原因らしい、と識者は分析する。

昨年来モスクワやペテルスブルグを揺るがしているデモ騒ぎは、アメリカの差し金によるものだ、とプーチンはアメリカを非難してきた。先日は、デモのリーダー数人を急襲して家宅捜査を行ったところだが、その目的は、デモのリーダーがアメリカから資金援助を受けている証拠を見つけだすためだったといわ
れている。

こんなわけだから、プーチンにはアメリカが憎くてたまらなく映る。アメリカの尻馬に乗せられてアサド政権を崩壊させるのを手伝ったりしたら、その次は自分がアメリカの標的にされかねない、そんな風に思っているフシがある。プーチンがアサドに武器の提供を続けてやまないのは、そんな判断が働いているせいだ、との見方もある。

これを政治家の誇大妄想と片づけるわけにはいくまい。プーチン程の大物になると、誇大妄想がどんな災厄をもたらすか、見当もつかないからだ。(写真はAPから)





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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