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ロシアがNATOへの先制攻撃を示唆


先日はイスラエルのネタニアフ首相が、イランへの先制攻撃の可能性について言及して話題をさらったが、今度はロシアの高官が、NATOへの先制攻撃の可能性について言及し、アメリカを含むNATO加盟諸国を苦笑させている。

この発言が飛び出したのは、5月3日にモスクワで開かれた国防関係の国際会議の席上、発言したのはロシア軍の参謀総長ニコライ・マカーロフだ。マカーロフは、コンピュータで作成した仮想戦争のイメージを紹介し、その中でロシアによるNATOへの先制攻撃がありうると表明したのだ。

マカーロフ発言の背景には、アメリカとNATO諸国が進めているミサイル防衛システムがある。NATOはトルコ、ポーランド、ルーマニアの諸国に高性能レーダーとミサイル迎撃システムを配置する計画を進めているが、もしこれが完成すれば、ロシアにとっては深刻な事態が予想される。ロシアの弾道ミサイルが無力化され、ロシアがNATOによる攻撃にさらされることが憂慮されるからだ。

メドヴェージフは、こんな憂慮をもとに、NATOのミサイル防衛システムがロシアにとって脅威にならない方向を模索してきた。彼が主張したのは、ロシアにもそのシステムに参加させろということだった。自分も参加すれば、一方的にNATOの標的になるという最悪のシナリオは避けられるのではないか、そう考えたのだろう。

しかしNATOはメドヴェージェフの申し出を拒否した。そして、このシステムは、メドヴェージェフが勘違いしているようなロシア対策としてのものではなく、あくまでもイランを対象にしたものなのだから、心配しなさんな、と慰めにかかった。しかし、このシステムが想定している配置場所が、ルーマニアやポーランドであることを考えれば、ロシアの懸念のほうにより多くの合理性があるといえそうだ。

だから、マカーロフの発言は、ロシアの中で高まっている安全保障上の深刻な懸念を物語っているものとみていいだろう。

一方、別のロシア高官は、日露関係に触れ、ロシアが北方諸島問題で日本に譲歩する余地は全くないと表明した。日本は2000年までに領土問題を解決して日露平和条約を締結したいとする立場を自分自身で崩したのだから、領土問題について云々する資格はないし、ロシアもこれ以上日本の寝言に付き合う意思はないということらしい。

これは、元日本国総理大臣森某が次期ロシア大統領プーチンと会談するのを踏まえて、日本側をけん制したものだと受け止められる。

こうした一連の動きからすると、ロシアはどうも、プーチン新時代の幕開けを前にして、かなりタカ派的になっていると忖度される。(写真はAPから)





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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