ロシア情勢を読む
HOMEブログ本館東京を描く水彩画ブレイク詩集フランス文学西洋哲学 | 万葉集プロフィールBSS


反プーチンのうねりは収まるか


昨年末にロシア各地で高まった反プーチン運動。最初に集会を呼びかけたのは野党勢力だが、Facebook や「ヴ・コンタクテ」といったソーシャルネットワークを通じて、様々な階層から参加表明が相次ぎ、膨大な規模の集会へと発展した。

集会では、「統一ロシアはペテン師と泥棒の政党だ」とか「プーチンとメドヴェージェフは出て行け」といった過激なスローガンが目立ったが、これらのスローガンのそもそもの創作者は反体制ブログで一躍時の人となったナヴァーリヌィ氏だ。氏自身はリベラルと云うよりは、コチコチの民族主義者らしいが、ロシアの社会に横行する不正を憎む点では人後に落ちない。

今回の騒ぎの発端となった下院議員選挙での不正も度を過ごしたものだったらしい。NHKの石川一洋氏のレポート(プーチン神話の終焉「世界」2月号)によれば、「統一ロシア」の実際の得票率は30パーセント後半からせいぜい40パーセントだった可能性が高い。それに50パーセントに近い見せかけをさせたのだから、すさまじい不正がなされたことを物語っている。

不正はモスクワなどの大都市で、集中的に行われたらしい。ナーシなどのプーチンの親衛隊と云われる組織を通じてなされたようだ。

たとえば、モスクワとその周辺部では、これまで同じような選挙傾向(統一ロシアへの支持率)を示してきたが、今回は周辺部では32パーセントなのに対して、モスクワ中心部では46パーセントとなり、またベッドタウンの隣り合った地域同士で、片方が30パーセント未満なのにもう片方が80パーセント以上と、不自然な事例が続出した。不正を行った連中が、広く万遍なくではなく、せまいポイントで集中的に工作したことを伺わせる。

年が明けていまのところは、騒ぎは中断したかのように鎮静化している。しかし3月には大統領選挙がある。それに向けてナヴァーリヌィ氏は、「プーチン以外の候補者に投票しよう」と呼びかけ始めた。

プーチンが敗れる可能性は殆ど考えられないが、それでも民衆の示した意思はプーチンの今後の行動を縛るようにはなるかもしれない。

ロシアで起きている民主化へのうねりは、そう簡単にはおさまりそうにない。(写真はAFPから)





HOMEロシア情勢









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである