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メドヴェージェフのNATOへの敵対姿勢:ミサイル防衛システムを巡って |
NATOが計画しているミサイル防衛システムにロシア大統領メドヴェージェフが神経をとがらせている。アメリカ主導のNATOがポーランドやルーマニアへミサイル防衛システムの配置を進めようとしていることを強く非難、このまま進めればロシア側も対抗措置として短距離ミサイル「イスカンデル」をカリーニングラードやグルジア近くに配置すると警告、更にアメリカとの間で進めてきた戦略兵器削減条約「新START」からの脱退をも示唆した。 これに対してNATO側は、この計画はイランからの核弾道攻撃に備えることが目的でロシアを標的にしたものではないと弁明しているが、メドヴェージェフにはそうは受け取れないようだ。 そもそもNATOとのミサイル防衛システムの共同運営を提案したのはメドヴェージェフ自身だった。しかし、システムの運営にロシアも深くかかわらせろという要求にNATO側が難色を示したことから、共同運営をめぐる交渉はとん挫した。そのうえロシアの意向を無視するかのように防衛システムの配備が現実化されようとしている事態に、メドヴェージェフが怒りを覚えたということらしい。 メドヴェージェフが強気になっていることの背景には、来年の大統領選が影を落としている。大統領への復帰を公然と宣言したプーチンは国民の支持を強めるために愛国的、右翼的な傾向を強めている。そんななかで鳩派ぶったイメージがもともと強いメドヴェージェフはますます陰に追いやられる恐れがある。こんな恐怖心がメドヴェージェフを強硬姿勢に走らせている、そんなうがった見方が流れている。 それにしてもロシアの軍事力基盤がソヴィエト崩壊後ガタガタになっているのは公然の秘密だ。かつてアメリカと軍事覇権を争った頃の面影はない。いくら背伸びしても、ロシアのミサイルシステムがNATOのシステムに太刀打ちできる見込みはない。 こんな状態のもとでもなお背伸びしたがるのは、どういうわけか。メドヴェージェフは頭を冷やして、もっとよく考えたほうが良い。(写真はAPから) |
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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |