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第二期プーチン時代を迎えるロシア


来年の3月にプーチンがロシアの大統領に復帰することが確実になった。憲法改正によって、ロシアの大統領職は2期12年間やれるようになったので、プーチンは長期的に政権を掌握し、ロシアを自分の好きなように作り変えていくことだろう。だがそれは、ほかならぬロシア人自身にとっては、必ずしも好ましいことにはならないだろう。

プーチンの復帰は、メドヴェージェフのもとでたとえ名目倒れに終わったとはいえ、近代化をめざす路線が後退し、全生活分野での停滞や個人崇拝の高まりといったものを予感させる。また経済分野でも、原油や天然ガス頼りの偏った構造が一層固定され、自由主義経済路線が後退し、ソ連型の統制経済の復活を予想させる。

プーチンの第一期時代には、ロシアの経済はそれなりに順調で、それが国民生活の向上を支え、結果として政権の安定をもたらした。しかし、そうした幸運な事情は、第二期政権下では望めそうもない。

ロシア経済にとって生命線ともいえる、原油・天然ガスはもうこれまでのような成長はもたらさないことは明らかだ。原油依存からの脱却が世界的な傾向となり、それが原油価格の低下をもたらす一方で、積年の投資不足で原油・天然ガス産業の生産基盤が老朽化しているといった事情がある。

とにかくこれまでのロシアは、原油・天然ガスからあがる収益を国民に配分し、国民の高い消費性向をバネに成長を遂げてきた。なにしろ、ロシアの労働分配率は65パーセントにも達する。その一方、投資には不熱心で、原油・天然ガス産業の生産基盤にさえ必要な投資を怠ってきた。

中国が、労働分配率を40パーセント程度にとどめ、固定資本投資に資源を集中することによって、「世界最大の工場」といわれるまでに、工業生産の拡大にまい進してきたこととは著しい対象だ。

プーチンはまた、産業分野への権力的な介入にも熱心だ。ソ連の解体によっていったん民有化の流れに乗った産業分野の多くに、再国有化と独占化をもちこみ、ロシア経済を閉塞させようとしている。

たとえば、第一期プーチン時代の2004年から2007年にかけて、プーチンはそれまでのエネルギー・機械産業を解体して、多くの国営企業を作り、そのトップに自分の腹心を送り込んだ。その結果これらの企業は、政府の指揮を受けるというよりは、プーチンの個人的な支配下にあるかのようなさまを呈した。産業の私物化といえるこうした流れは、第二期には一層強まる可能性がある。

(参考)「プーチン復帰で停滞長期化」(丸山浩行:エコノミスト11月1日号)





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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