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プスコーフ(Псков)地方の村落消滅


ロシアの人口が21世紀にはいって本格的な減少傾向を示していることは、先稿で紹介したとおりだ。この期間はプーチン政権の黄金期に重なっており、ロシア人がかつてない豊かさを味わってきた時期だけに、一方で人口が減り続けてきたことを確認するのは、不思議な気持ちになろうというものだ。

人口の減少には、地域差がある。最も激しく減少したのは、エストニアと国境を接するロシア西北部プスコーフ(Псков)地方だ。2002年の国勢調査から昨年の国勢調査までのわずか8年間に、11.5パーセントの人口が失われた。それにともない、2000もの自治体が消滅した。

何故こんなに激しい人口減少に見舞われたのか。TIME誌の最近の記事が分析している。The Russian Region That's Dying on Europe's Doorstep By Simon Shuster

プーチン時代のロシアでは、自治体の適正規模化運動が大々的に実施された。あまりに規模の小さい自治体は、行政資源の無駄につながるという理由から、統廃合が進められた。日本における平成の大合併を思わせるが、ロシアの場合には、日本の比ではないくらいに徹底していた。一定規模以下の自治体には、学校も作れないほど財政が逼迫する情況を国自ら演出した。その結果小規模自治体が次々に消滅した。それらの自治体は当然農村部に集中しているので、農村部ほど社会的人口減が大きかった。

だがこれだけの理由では、プスコーフの人口減少の原因が網羅されたことにはならない。同じ農村部でも、プスコーフほど人口が減少しなかったところもあるからだ。

もうひとつの要因としては、プスコーフ地方の村落の特徴が上げられる。この地方はいわゆる散村地帯で、人口10人以下の小規模な集落がばらばらと点在している。いままではそうした集落にも一定の行政資源がわりあてられてきたが、プーチン時代にはそれらがことごとく取り上げられたことで、住民とりわけ小さな子どもを抱える世帯は都市部に移住することを余儀なくされた。

現在プスコーフ地方に残っている自治体はみな小規模で、しかも人口は高齢化し、住民は失業にあえいでいるといった有様らしい。

ロシアの男たちはただでさえ大酒飲みなのに、ほかにやることがなくなったおかげで、いっそう酒を飲むようになった。彼らは昼間からウォートカを飲み続け、一年中酔っ払っている。その結果が若死につながることはわかりやすい道理だ。





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