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ロシアの不法対外投資 Illicit Capital Outflow:中国についで二番目

不法対外投資 Illicit Capital Outflowとは日本人には聞きなれない言葉だが、海外では違法な資産形成の手段として広く知られている。主に貿易に付随して得た資金を、自分の国に還流させずに、直接対外投資にまわし、課税回避や資金洗浄の目的を達成しようとするものだ。

アメリカのシンクタンクGlobal Financial Integrity (GFI) によれば、2,000年から2,008年までの間について、最も不法対外投資の規模が大きかったのは中国の2兆1800億ドル、ついでロシアの4270億ドル、以下メキシコ(4160億ドル)、サウディアラビア(3020億ドル)、マレーシア(2910億ドル)、アラブ首長国連邦(2760億ドル)、クウェート(2420億ドル)、ヴェネズエラ、ボリヴィア、カタール、ナイジェリアの順になる。中国を別にすればみな石油や天然ガスの輸出国だ。

これらの国における不法対外投資の最も手っ取り早い方法は、輸出代金の割り増しによるペイバックだ。母国での課税を逃れるのが目的だから、もちろん闇の金だ。その闇の金を国外口座に振り込んだり、そこから対外投資にまわしたりする。投資先はアメリカ、イギリス、カイマンなどといわれる。

ロシア人の不法対外投資について、英語版プラウダの最近号が解説していた。プラウダはこれの横行を嘆かわしいことと考えているようだが、課税逃れはともかくとして、本来ロシアの経済発展のために投資させるべき資本が、いたづらに国外に流れているのは問題だという視点からのようだ。

ロシアの不法対外投資は、金融市場の状況によって大きく変動している。2000年には156億ドル、2004年には370億ドル、2007年には553億ドルだったものが、金融危機が発生した2,008年には一気に1964億ドルに跳ね上がった。

ロシアにとって不法対外投資が特に問題なのは、他の多くの該当国に比較して、公的な企業がこうした行為をする割合が高いことである、とプラウダは結んでいる。





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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