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変らぬ政治システム:ロシアの風土病


アメリカの外交官が現代ロシアを称して「腐敗したマフィア国家」だといったことが、WikiLeaksによって暴かれた。本ブログでもその概要を紹介したところだが、その腐敗振りについて、別の角度から、Economistが分析している。Frost at the core Dmitry Medvedev and Vladimir Putin are presiding over a system that can no longer change

ロシアの政治的・社会的腐敗現象は、ここ数年一段と進んでいるようだ。しかもその腐敗がむき出しの暴力を伴っている。先日は興奮したサッカーファンが集団で北カフカース人を襲撃したが、それを裁こうとする動きは見られず、暴力がのさばっているという印象を改めて与えた。また、カーシン事件に象徴されるような、ジャーナリストに対する暴力行為が蔓延している一方、各地で敵対者を標的にした私的なリンチ事件が勃発している。これでは法治社会とはいえないと、当のロシア人自身が認めるほどの無法ぶりだ。

西欧の価値観から見ると、ロシアはとても近代的な民主主義国家とはいえない。国民は一人の人間としては尊重されず、人間同士の関係は法ではなく力によって左右される。まさに野蛮な闇が支配する社会といわねばなるまい。

こうした野蛮な文化は、プーチンによるホドルコフスキーの恣意的な弾圧に最もよく現れていると、分析者はいう。ホドルコフスキーはまったく同じ内容の罪状なるものを蒸し返され、刑期を延長すべく、裁判にかけられているが、これは彼の出所を不具合に思っているプーチンの意向だと言うわけだ。

ホドルコフスキーが残した膨大な財産のおかげで、プーチンは政治家として成功することが出来た。プーチンの時代は、ロシアが経済的に潤った時代であったといえるが、それは石油や天然ガスといった化石資源のおかげでもたらされたものだ。そのロシアの化石資源を、ホドルコフスキーがプーチンのために差し出したのである。

化石資源から入ってくる潤沢な金を、プーチンは社会の各層にばら撒くことによって、大多数の国民の支持を取り付けた。金が潤沢である間は、人びとは何らかの形でおこぼれにあずかることができるから、多少非民主的なことが行われても、国民はそれを問題にしたりはしない。

潤沢な金の分配に党派的な利害が絡んだのは、いかにもロシア的であった。金を分配するのは官僚だ。官僚は権力と金力をセットにして、それを自分の利害のために行使した。ロシアは特異な金権官僚主義ともいうべきシステムをとっているのだ。

共産党の時代には、悪名高いノーメンクラトゥーラがはびこったが、プーチンはそれと同じようなシステムを見事に再建したわけだ。こうした野蛮なシステムへの嗜好性は、ロシアの風土病ともいうべきものだ。

こういった具合に、なかなか鋭い分析である。(上の写真はホドルコフスキー:AP提供)





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