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ロシアに希望はあるか? メドヴェージェフへの失望


先日メドヴェージェフ大統領の人権問題担当首席補佐官エラ・パンフィローヴァが突然辞任した。理由はロシアにおける人権弾圧がすさまじく、多くの人権活動家が殺されたり消されたりしている状況に、担当者として耐えられないということだったらしい。

エラがとくに問題としたのは、高齢の女性活動家リュドミーラ・アレクセーエヴァ(83)がプーチンの私的な親衛隊ナーシによって恫喝されたことだった。エラはこの問題を公に取り上げ、不当な暴力をやめさせるよう訴えたが、プーチンとその仲間からはせせら笑われただけだった。

最近1年間についてみても、人権活動家で殺されたものは3人、行方不明になったものは4人にのぼる、一時期勢いを弱めた左翼狩りが復活したといってもよい状況だ。7月にはモスクワとペテルブルグで、政府の不法を訴えるデモ隊が、官憲によって呵責のない弾圧を受けた。

こうした状況を前にして、メドヴェージェフは何をしているのだという疑念が持ち上がっている。というのも彼が大統領就任時に約束した政策の柱の一つに、人権の擁護という項目があったからだ。

メドヴェージェフは果たして、自分から公約をおろしたのか、それとも暴走する連中を取り締まる力がないのか。真実はどうも後者らしいというのが大方の見方だ。

メドヴェージェフは、プーチンの後継者として相当の時間を過したが、どうやらいまだに一人前の男として自立していないらしい、あいかわらずプーチンのイエスマンであり続けているらしい、そんな情けない有様が、エラに辞任を決断させた本当の理由らしい。

なにしろ自由と平等が嫌いな点では世界でも折り紙つきのロシア人政府のことだ、メドヴェージェフの努力をもってしても、政治の風土はなかなか変えられぬものと見える。(上の写真<AFP提供>は人権活動家を弾圧するモスクワ警察)





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