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アンナ・チャップマン:ヴォルゴグラードの英雄 |
派手なスパイ・サスペンス劇で一躍世界的に有名になったアンナ・チャップマン女史。(上の写真:AP提供)米露両政府の高度に政治的な判断にもとづき、仲間のスパイ9人とともに、ロシアに拘束されていたアメリカ側スパイ4人と交換で釈放されたうえ、国外追放処分にされた。 アンナ自身はその後、イギリスに戻ることを希望していたようだが、イギリス政府はアンナの市民権を剥奪、入国も禁止するという厳しい態度に出た。そこでアンナは、どうしていいか一時期悩んだようだが、そんな彼女に暖かい手を差し伸べるものが出てきた。アンナの故郷ヴォルゴグラードだ。 ヴォルゴグラードといえば、ソ連時代にはスターリングラードと呼ばれていた。第二次世界大戦中、ナチスドイツとの壮絶な戦いで有名になったところだ。ロシア人にとって、スターリングラードの戦いは民族の存亡をかけた戦い(ロシア人はこれを大祖国戦争と呼んでいる)を象徴するものであり、この戦いを彩る数々の戦闘シーンはいまでも人々の心の琴線に訴えるものがある。 その町が、すばらしい愛国者としてアンナを讃え、いまや行き場を失ったかに見えるアンナのために居場所を用意しようと申し出たのだ。 厳密に言うと、アンナにオファーを送ったのはロシア自由民主党のヴォルゴグラード委員会。次の総選挙でアンナを候補者に立てようというのだ。この政党はウルトラ右翼を標榜し、とかく政治的に問題のある人物を議員に抱えていることで知られている。数年前にロンドンで起きたリトヴィネンコ暗殺事件の首謀者と目されるアンドレイ・ルゴヴォーイなども、この政党の国会議員である。 マスメディアの人気者が国会議員になる例は世界中に珍しくもないが、ロシアではことのほか多いようだ。というのも、国会議員にはとりわけ必要な経験や能力といったものは必要ではなく、いってみれば有名人でさえあれば、誰でもなれるようなのだ。 だからといって軽蔑されているわけでもなく、市民からは一定の敬意を表される存在らしい。 はたしてこんな役回りをアンナが気に入るかどうか、いまのところフィフティ・フィフティだそうだ。 |
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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |