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アンナ・チャップマン Anna Chapman:ロシア人スパイ団の摘発


先日(6月27日)ニューヨークでロシア人のスパイ団が摘発されたというニュースが世界中に流れて人々をあっと驚かせた。スパイといえば、007でおなじみのジェームズ・ボンドを始め、冷戦時代の遺物と思っていた人が殆どだったろうから、今更に大規模なスパイ団が摘発されたなどという話を聞くと、いかにもアナクロニスティックに感じられただろう。

摘発されたのはいづれもアメリカを根拠にスパイ活動に従事していたと認定されたロシア人10人、そのなかにアンナ・チャップマン(上の写真:Rex Features )という美人が含まれていた。彼女は単に美人というに留まらず、経歴にも謎が多いし、しかも目下インターネット上で自分のプロフィールを公開していたとあって、好事家たちの注目を引いた。

彼女は現在28歳の自称実業家。本名はアーニャ・クシチェンカという。英紙ガーディアンの報道によれば、父親はもとKGBの上級職員で、当然スパイ活動にも従事したことがある。

彼女は2002年ごろロンドンで知り合ったアレックス・チャップマンと結婚したが、その頃の彼女はごく普通の女の子に見えたとアレックスは言っている。だが彼女は次第に容貌も活動振りもだんだんと派手になり、2007年には自分を捨てて遠い世界にいってしまったように感じられた。どうもその頃から本格的にスパイ活動に取り組むようになったのではないかと推測されている。

彼女を始め10人のスパイたちの容疑が実際にどのようなものか、いまのところ詳細は明らかにされていない。しかし彼らの日ごろの活動振りから類推すると、アメリカの上級公務員と付き合いがあったという証拠もないし、また重要な情報源と深いかかわりがあったという確証もない。第一冷戦が終わった今日、スパイを通じて盗まなければならないような、国家間の重要かつ深刻な秘密情報があるのかどうか。

彼らが集めていたのは、アメリカの国家的な機密情報というよりは、プーチン首相が個人的知りたいようなもっとマイナーな情報であった可能性がある。

なにしろプーチンには政敵が多い。プーチンはそれらの政敵を、これまでに何人も闇の彼方に葬ってきた。数年前にロンドンで起きた、毒殺事件などはいまだに真相が解明されていないものだが、おそらくプーチンの指令に基づく暗殺だろうといわれているし、その過程でプーチンの意を受けたスパイたちが活躍しただろうとも推測されている。

この事件の報道がなされたとき、たまたまクリントン元米大統領がモスクワを訪問中だった。そこでクリントン氏の謁見を受けたプーチン首相は、クリントン氏に対してあからさまな不快感を示したという。もっともこの事件がもとで両国が不幸な関係に陥ることのないように祈るとの言葉を付け加えるのを忘れなかったそうだ。





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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