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ロシアの極東軍備拡大:真の意図は?



メドヴェージェフによる北方諸島視察以来、ロシアの高官による視察が常態化している。中でも国防相の視察は軍事的に大きな意味を持っていると考えられる。というのも、それは領有権を主張するためのパフォーマンスであることを超えて、この地域の軍事力強化にロシアが腰をすえて取り組み始めたことの、シグナルと読み取れるからだ。

メドヴェージェフは巨額の予算を投じて軍事力を強化する計画を打ち上げたが、その大部分は極東地域のために使うといわれている。その意図が日本の軍事力に対抗することであることは、誰もが疑わない。

だが中には深謀遠慮の人もいると見えて、このロシアの動きは単に日本を意識したものにとどまらず、中長期的には中国の動きをにらんだものだとする論調もある。アメリカン・エンタープライズ研究所の日本部長マイケル・オースリン氏がウォールストリート・ジャーナルに寄せた文章は、その最たるものだ。

ロシアは日本との間で北方諸島をめぐる領土問題を抱えているが、中国との間でも長い領土問題を抱えている。しかも17世紀にさかのぼる厄介な問題で、いつこれが両国の深刻な対立をもたらさないとも限らない。そのときを見据えて、ロシアは国力が許す限りで、今のうちから備えておこうと考えてもおかしくはないと、オースリー氏はいう。

中国がシベリアをめぐる国境問題を蒸し返すことにどんな利益があるのかというと、まず膨大な地下資源の存在があげられる。シベリアには石油や天然ガスの膨大な資源があり、シベリアと国境を接する中国にとっては、それら資源の恩恵を最大限に享受するためにも、国境問題を改めて蒸し返す価値はある。

次に極東の海域が中国にとって持つ地政学的な価値も見逃せない。中国は現在南シナ海を通じて世界の海とつながっているが、これが周辺諸国との深刻な対立の原因となっていることから、日本海を通じて北極航路を展開したいという動機も十分持っている。

こうしたことを視野に入れれば、将来極東の領土をめぐって中ロが対立する日がやってくる可能性は非常に高い。ロシアとしては当面顕在化している日本との対立に備える一方で、将来における中国との対立にいまのうちから備えておこうと考えても不思議ではない。オースリー氏はそう指摘する。

ところでこの文章の中で筆者がオヤと思ったのは、来るべき中ロ対立をにらんだときに、日本がとるべき態度は、ロシアと組んで中国と向かい合うことだといっている点だ。

どこからそういう発想が出てくるのか、筆者などにはよくはわからぬが、もしかしたら、世界の平和にとっては、ロシアよりも中国を叩いたほうがましだという考えがあるのかもしれない。一種の黄禍論だろう。(写真はロシア最大の戦艦ナヒーモフ:プラウダから)





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