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存在感を増すショイグ露国防相




ロシアの政治シーンにおいてショイグ国防相の存在感が高まっているようだ。ロシア軍は、冷戦終了以降すっかり弱体化し、戦争はおろか治安維持の能力もないと酷評されてきたが、最近になって、軍隊としての体裁を急速に整えた。クリミア併合やウクライナ危機に当たっては、ロシアの軍事能力を世界に向かって示したし、最近ではシリアに軍事介入して、ロシアの軍事的プレゼンスを強烈に印象付けた。ロシアの軍隊はもはや案山子の集団ではない。規律と戦力を伴った強力な軍隊になりつつある。軍隊をここまで強く鍛え上げたのがショイグとあって、彼の株は急に高まったわけである。自称事情通の間では、プーチンの次の大統領はショイグだ、と言われるようになった。

ショイグはプーチンよりも三歳年下だが、ロシアの官僚組織における経歴はプーチンに劣らず長い。エリツィンがプーチンに権力を渡すにあたっては、ショイグをパートナーとして選んだほどだ。しかし彼は、プーチンの前では野心を見せるのを控えてきた。出しゃばれば打たれるということを理解していたのだ。彼がこれまでやって来た仕事は緊急事態省の仕事だ。ロシアには緊急事態が頻発するので、彼の出番は絶えなかった。そして緊急事態が起こるたびに、それらを手際よく処理してきた。

この能吏としての側面をプーチンに評価され、2012年に、セルジュコフに代って国防相に就任した。セルジュコフは、ロシア軍の強化にあまり成果を上げられなかったので、ショイグにそれが託されたわけだ。ショイグはプーチンの期待に応えた。そして自分が手塩にかけた軍隊の能力を試す機会に早々と見舞われた。彼はこれらの機会をうまくさばいて、プーチンの評価を高めた。

今の所、プーチンとショイグは蜜月の関係にあり、両者は鉄の結束を誇っていると言われる。プーチンには、もう一期含めると八年ほどの期間が残されているので、ショイグがプーチンの禅譲を期待している限り、プーチンの次の大統領になる可能性は高いとは言えない。そこでショイグが大統領への野心を実現するには、プーチンを追い落とす工作が必要になる、と言って、ロシアの権力闘争を煽るような論調も、西側には現れている。プーチンはそれほど、西側のジャーナリストに人気がないというわけだ(写真左がショイグ、ロイターから)。

(参考)Master of emergencies Economist





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