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ロシアの敵は日本の味方:アベポリティクスの外交戦略


安倍総理大臣が、G7への出席途上ウクライナに立ち寄り、共同声明を出した。「力による現状変更を決して認めず、法の支配、主権、領土の一体性を重視していく」というものだ。これがロシアによるクリミア半島の併合と、東ウクライナのさらなる併合へのロシアの野心を非難しているのは明らかだ。併合とはありていに言えば他国の領土の侵略にほかならない。領土をロシアによって侵略されたという点では、日本はウクライナと同じ立場にあるわけだから、今回の共同声明には相当の理があるといわねばなるまい。日本は今後、ロシアとの間で同じような問題を抱えている国と協力して、ロシアによる他国侵略の歴史を糾弾し、できうれば侵略された領土の回復に努めねばならない。

そのためには、生ぬるい方法では効果がない。国際政治と言うのは峻厳な論理によって支配されているものだ。力によって奪われたものは、力によって奪い返すくらいの意気込みがないといけない。力と言っても、物理的な力の行使、すなわち戦争と言うばかりではない、ロシアを外交的に追い詰めて行くことも、力の行使の範疇に入る。しかし、外交だけで問題が解決しない場合には、戦争という手段に訴える気構えが必要であろう。

その場合、日本が単独でロシアと戦争をするよりも、ロシアと敵対関係にある国と同盟を結び、共同してこれにあたることがのぞましい。ウクライナは地理的にロシアと近接しているわけだから、日本がウクライナと同盟を結ぶ意義は非常に大きい。ウクライナと軍事同盟を結び、ウクライナの領土内に、モスクワを一撃できる日本のミサイル攻撃基地を設置することができれば、ロシアに対する戦略的な優位は格段に高まる。これまでは、極東のロシア軍基地から東京を一撃できても、日本国内の基地からモスクワを一撃することは不可能に近かった。つまり日露は軍事的に非対称の関係にあったわけだが、ウクライナと軍事同盟を結ぶことによって、その非対称が解消され、日本はロシアと軍事能力的にフィフティフィフティになる。

安倍政権は目下、集団的自衛権の行使ができるようにと、安保法制の整備に懸命になっているようだが、集団的自衛権というのは、まさに対ロ関係のようなケースに効力を発揮するのだと認識しなければならない。

安倍総理がどこまで考えて今回の共同声明を出したのか、その真意を知りたいものだ。ロシアと敵対するアメリカの意を汲んで、その代弁をしたくらいの認識では困る。日本は日本として、対ロ関係の最大の問題である北方四島の侵略をやめさせる、そういう意気込みで臨んで欲しいものだ。

もっとも、集団的自衛権の行使と言い、ロシアと敵対する国との軍事同盟と言い、それを国民の理解を得て実行するためには、正々堂々とした手続きを踏んで憲法を改正する、という憲政上の王道を踏んでもらいたいものだ。なにしろロシアと戦争ということになれば、数百万人(場合によっては数千万人)規模で日本人が死ぬことになる。日本国民にはそれなりの覚悟を持ってもらうことが必要だ。





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